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経路積分①:遷移確率の計算・1自由度の量子力学【物理学者が解説】

6. 物理学(専門家向け)
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想定する読者層
  • 量子力学を既習であり、経路積分を自習したい学部生(学部3〜4年前期程度)
  • 場の量子論の入門として経路積分を学びたい大学院生(修士課程程度)

この記事では、場の量子論の入門として「相関関数の経路積分表示」をご紹介します。

本記事を読むことで
経路積分量子化の手順で、重要な物理量の一つである「遷移確率」を計算する感覚を掴んで頂けると幸いでございます。

本記事を執筆している、私トーマは、物理学者として勤務しています。
そんな私が分かりやすく解説いたします。

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導入・計算の準備

演算子の時間依存性

量子力学では、座標演算子 ˆq と共役運動量演算子 ˆp とを基本要素としています。
これらの演算子は交換関係
[ˆq,ˆp]=i
を満たします。
なお以下では、ディラック定数が =1 となるような単位系を扱うこととします。

系のハミルトニアン演算子 ˆH(ˆp,ˆq) はこれらに依存する関数であるとします。

ハイゼンベルグ描像により、座標および共役運動量演算子の時間依存性
ˆq(t)=exp(iˆHt)ˆqexp(iˆHt)ˆp(t)=exp(iˆHt)ˆpexp(iˆHt)
と書きます。

例えば、時間に依存する座標演算子の固有状態を
ˆq(t)|q,t=q|q,t
のように導入します。
この固有状態は、シュレディンガー描像の固有状態 |q
|q,t=exp(iˆHt)|q
という関係にあります。

共役運動量演算子の固有状態 |p,t および |p に関しても、式 (4) & (5) と同様に書けます。

固有状態の内積等

シュレディンガー描像の、位置と共役運動量に関する固有状態 |q および |p に関しての内積 q|p を計算します。

まず内積 q|q に、運動量に関する完全系 dp|pp|=1 を代入すると
q|q=dpq|pp|q
となります。
また q|q=δ(qq) なので、フーリエ変換を用いると
q|q=δ(qq)=dp2πexp[ip(qq)]
となります。

以上のことから、式 (6) と式 (7) を比較することで
q|p=12πexp(iqp)
を得ました。

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遷移確率の計算

量子力学における重要な物理量として「遷移確率」があります。
時刻 ti に位置 xi にあった粒子が、時刻 tf に位置 xf に遷移する確率は
qf,tf|qi,ti=qf|exp[iˆH(tfti)]|qi
で与えられます。

ここで、時間間隔を N 等分し
tm=ti+mϵ,ϵ=tftiN,m=0,,N
と定義します。
t0=tItN=tf となります。

さらに、時刻 tm における完全系 dqm|qm,tmqm,tm|=1 を式 (9) に代入すると、遷移確率は以下のように式変形できます。
qf,tf|qi,ti=qf,tf|(dqN1|qN1,tN1qN1,tN1|)××(dq1|q1,t1q1,t1|)|qi,ti=dqN1dq1qN,tN|qN1,tN1q1,t1|q0,t0
と表すことが出来ます。

時刻 tm での要素

(11)より、時刻 tm での遷移確率の要素は
qm+1,tm+1|qm,tm=qm+1|exp(iˆHϵ)|qm
と書けます。

(12) に、共役運動量に関する完全系 dpm|pmqm|=1 を代入すると
qm+1,tm+1|qm,tm=dpmqm+1|pmpm|exp(iˆHϵ)|qm
となります。

ここで、iˆHϵ=0 近傍でのテイラー級数展開
exp(iˆHϵ)=j=0(iϵ)jj![ˆH(ˆp,ˆq)]j
を考え、かつ
pm|ˆH(ˆp,ˆq)|qm=H(pm,qm)pm|qm
なので、式 (8) を利用すると
qm+1,tm+1|qm,tm=dpmexp[iH(pm,qm)ϵ]qm+1|pmpm|qm=dpm2πexp[ipm(qm+1qm)iH(pm,qm)ϵ]
を得ます。

N の極限

(16) を式 (11) をに代入すると
qf,tf|qi,ti=limN[N1m=1dpmdqm2π]dp02πexp[iN1m=0[pm(qm+1qm)H(pm,qm)ϵ]][dpdq]exp[itftidt(p˙qH(p,q))]
と書けます。

ここで、離散変数 (pm,qm) が連続変数 (p,q) になり、 [dpdq] で経路積分の測度を表しています。

ラグランジアンの導入

ここでハミルトニアン演算子が
ˆH(ˆp,ˆq)=12ˆp2+V(ˆq)
と書けるとすると、式 (17)p に関するガウス積分を実行して
qf,tf|qi,ti=[dq]exp[itftidt(12˙q2V(q))][dq]exp[itftidtL(q,˙q)]
と書けます。
ただしここで、L(q,˙q) はラグランジアンです。

ここで作用 S
StftidtL(q,˙q)
と定義すると、遷移確率はexp(iS)q 積分の形で表すことが出来ます。

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まとめ

1自由度の量子力学の経路積分量子化の手順で
「遷移確率」の計算をまとめました。

本記事をサクッと読んだ上で、以下に示す参考書籍を基にして、手を動かしてより詳細な議論を行なってみて下さい。

参考書籍

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