場の解析力学①:オイラー・ラグランジュ方程式【東大研究員が解説】

6. 物理学(専門家向け)
想定する読者層
  • 量子力学、解析力学を既習であり、場の量子論を志す学部生(学部3〜4年前期程度)
  • 量子論を専門としない大学院生・研究者(修士課程以上)

この記事では、場の量子論の前段階および場の解析力学の導入として「オイラー・ラグランジュ方程式」について解説します。

本記事を読むことで
場の作用や最小作用の原理に関する計算の感覚を大まかに掴んで頂けると幸いでございます。

本記事を執筆している、私トーマは、東京大学で物理学者として勤務しています。
そんな私が分かりやすく解説いたします。

なお過去の記事でも、場の理論・相対論の導入に関して解説しております。
合わせてご覧いただけると幸いでございます。

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場の作用・ラグランジアン

私の以前の記事

では、位置座標 \( q \) のみの一自由度での作用 \( S(q, \dot{q}) \)やラグランジアン \( L(q, \dot{q}) \)
\begin{eqnarray}
S(q, \dot{q}) \equiv \int d t L (q, \dot{q}) \tag{1} \label{actions}
\end{eqnarray}
について解説しました。
ただしここでは、次節での議論のために時間方向をユークリッド化していない形式で書きました。

これを用いることで、\( n \) 点相関関数は
\begin{eqnarray}
\left \langle 0 \right| T \left[ \hat{q}(t_{1}) \cdots \hat{q}(t_{n}) \right] \left| 0 \right \rangle = \frac{\int [dq] q(t_{1}) \cdots q(t_{n}) \exp [- iS(q, \dot{q})]}{\int [dq] \exp [-iS(q, \dot{q})]} \tag{2} \label{ncorre}
\end{eqnarray}
と書けることを見てきました。

場の理論への拡張

式 \eqref{actions} を場の理論へ拡張するには、まず \( q_{a} \) の多自由度系へ移ります。
次に、添字 \( a \) を空間座標 \( x_{j} \) に置き換え、これに依存する場の関数 \( \phi \left( t, x_{j} \right) \) に関する測度を考えます。
つまり、測度は
\begin{eqnarray}
\prod_{a} \left[ dq_{a} \right] = \prod_{a} \prod_{t} dq_{a}(t) \rightarrow [d\phi] = \prod_{x_{j}} \prod_{t} d \phi (t, x_{j}) \tag{3} \label{scale}
\end{eqnarray}
と式変形されます。

この時、場の理論での相関関数は、式 \eqref{ncorre}を書き換えて
\begin{eqnarray}
\left \langle \phi(x_{1}) \cdots \phi(x_{n}) \right \rangle &=& \frac{1}{Z} \int [d\phi] \phi(x_{1}) \cdots \phi(x_{n}) \exp [-iS \left( \phi \right) ] \tag{4} \label{ncorre2} \\
Z &\equiv& \int [d\phi] \exp [-iS \left( \phi \right) ]
\end{eqnarray}
と書けます。
ただしここで、時空座標を \( x = (t, x_{j}) \) とし、場の作用を \( S \left( \phi \right) \) としました。

この時作用 \( S \left( \phi \right) \) は、場 \( \phi \) およびその一階微分を用いて
\begin{eqnarray}
S \left( \phi \right) \equiv \int d t L (\phi, \dot{\phi}) = \int d^{d} x \mathcal{L} (\phi, \partial_{\mu} \phi) \tag{5} \label{actionf}
\end{eqnarray}
と書けます。
ここで \( \mathcal{L} (\phi, \partial_{\mu} \phi) \) は、ラグランジアン密度です。

なお時間方向をユークリッド化し、時空座標を \( x = (x_{j}, \tau) \) とした場合でも、作用は式 \eqref{actionf} と同様の形で書けます。
この時、ユークリッド化した作用 \( S_{\mathrm{E}} \left( \phi \right) \) は
\begin{eqnarray}
S_{\mathrm{E}} \left( \phi \right) \equiv \int d \tau L_{\mathrm{E}} (\phi, \partial_{\tau} \phi) = \int d^{d} x \mathcal{L}_{\mathrm{E}} (\phi, \partial_{\mu} \phi) \tag{6} \label{actionf2}
\end{eqnarray}
と書けます。
ここで \( \mathcal{L}_{\mathrm{E}} (\phi, \partial_{\mu} \phi) \) は、ユークリッド化したラグランジアン密度です。

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オイラー・ラグランジュ方程式

前節では \( \hbar = 1 \) での単位系で議論しましたが、 \( \hbar = 1 \) をあらわに書くと、相関関数は
\begin{eqnarray}
\left \langle \phi(x_{1}) \cdots \phi(x_{n}) \right \rangle &=& \frac{1}{Z} \int [d\phi] \phi(x_{1}) \cdots \phi(x_{n}) \exp [-iS \left( \phi \right)/\hbar ] \tag{7} \label{ncorre3} \\
Z &\equiv& \int [d\phi] \exp [-iS \left( \phi \right)/\hbar ]
\end{eqnarray}
と書けます。

重み \( \exp [-iS \left( \phi \right)/\hbar ] \) は位相因子であるため、さまざまな引数の値を取ると互いに打ち消し合います。
したがって、古典極限 \( \hbar \rightarrow 0 \) では、$S$ の値があまり変化しない \( \delta S = 0 \) となるような経路が主な寄与を与えます。

\( \phi(x) \) や \( \partial_{\mu} \phi \) を微小変化させた時に、作用がどれだけ変化するかを調べると
\begin{eqnarray}
\delta S &=& \int d^{d} x \left[ \frac{\partial \mathcal{L}}{\partial \phi} \delta \phi + \frac{\partial \mathcal{L}}{\partial \left( \partial_{\mu} \phi \right)} \delta \left( \partial_{\mu} \phi \right) \right] \\
&=& \int d^{d} x \left[ \frac{\partial \mathcal{L}}{\partial \phi} \delta \phi \, – \, \partial_{\mu} \left( \frac{\partial \mathcal{L}}{\partial \left( \partial_{\mu} \phi \right)} \right) \delta \phi + \partial_{\mu} \left( \frac{\partial \mathcal{L}}{\partial \left( \partial_{\mu} \phi \right)} \delta \phi \right) \right] \tag{8} \label{miniac}
\end{eqnarray}
と書けます。
上式の最後の項は、時空の無限遠での表面積分を与えます。
ここで \( \delta \phi \) が時空の無限遠で消えるような境界条件を選ぶことで、この項は無視できます。

はじめの2項が任意の \( \delta \phi \) で消え、\( \delta S = 0 \) となるためには
\begin{eqnarray}
\frac{\partial \mathcal{L}}{\partial \phi} \, – \, \partial_{\mu} \left( \frac{\partial \mathcal{L}}{\partial \left( \partial_{\mu} \phi \right)} \right) = 0 \tag{9} \label{el}
\end{eqnarray}
を満たす必要があります。
この式 \eqref{el} をオイラー・ラグランジュ方程式と言います。

なお、場が \( \phi_{j}(x) \) のように複数種類ある場合には、それぞれの場に対して方程式が存在します。

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まとめ

場の量子論の前段階および場の解析力学の導入として「オイラー・ラグランジュ方程式」について解説しました。

本記事をサクッと読んだ上で、以下に示す参考書籍を基にして、手を動かしてより詳細な議論を行なってみて下さい。

参考書籍

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